呪術廻戦おばあちゃん
中学の頃の話。
わたしの出身中学は公立のマンモス校で、 ひと学年300人近く生徒が在籍していた。 その中で成績をぶっちぎり一位をとる男子の友達がいた。 彼はすごい。勉強だけでなく部活も頑張ってたし、 クラスで1番かわいい女の子と付き合ったりしいた。 話も面白いし、もうホントホント無敵だった。
そんな彼が1番好きな食べ物が「卵かけご飯」 ということを知った時、大爆笑したのをよーく覚えてる。 彼はわたしから見て完全なるサイボーグだったのだが、 好きな食べ物が「卵かけご飯」ということを聞いて、 この人も人間なんだなぁ〜 という安心感と意外性から生まれた大爆笑エピソードは、 涙を流しながら大笑いした記憶がある。
シラスを乗っけると美味しいよ、と追い討ちで言っていたのも覚えて る。やかましやい
そんな彼との話の中で、今でも忘れられない不思議な会話がある。 大人になった今でも思い出す。
どういう話の流れだったか覚えていないが、 彼はおばあちゃんが苦手だと話を聞いたのを覚えている。 理由を聞いたところ、「風邪をひくと、 タンスからプルーンを取り出して痛いところに塗られる。」と。( !?)
彼は面白い話だろ、みたいな顔でヘラヘラしていたが、 こちとらびっくりして何も言えなかった記憶がある。
病気(今回は風邪だけど) はお薬を飲んだり手術をするやり方でしか治療できないと思ってい た私からすると、このプルーン治療法の感覚が分からなかった。
当時それを聞いたわたしは、彼のおばあちゃんは「魔女だ」 と思った!
好きな食べ物を卵かけご飯と聞いて安心していたが、 やはり彼は一般人と何かが違う。彼の家には魔女がいる…!サイボーグの先祖は魔女だったのだ。
居ても立っても居られないホットニュースは、友達に言う!あんまり表沙汰にしない方がいい話題かもしれないという勘から、 本当に仲の良い友達に下校時にこっそり言った。「 彼は風邪をひくと、おばあちゃんにプルーンを塗られるらしい。 こわくないか」と。
しかし友達はわたしの迫真の表情をスルリとかわし、あーーとゆっくり頷きながら「うちは、 頭が痛い時、 おばあちゃんに梅干しをこめかみに貼られたことがあったなぁ」 と言い出した。
そのとき、あれ? もしかして風邪をひいた時に食べ物を皮膚に塗りたくることって普 通なのか?と真剣に考えた。
そうだ。よくよく考えたらわたしも4〜5歳の頃、 喉の痛みがひどく苦しい思いをした時に、おばあちゃんにタオルで包 んだネギを首に巻かれたことを思い出した。身の回りにあり、 親しみのある食べ物が「薬」になることに当時は目を輝かせた。熱が出て体もヨロヨロ、心も寂しかったあの時に、優しい手つきでおばあちゃんが首にネギを巻いてくれたあの感覚を覚えている。当時のわたしはとっても嬉しかった。クソガキのわたしのことだから、鼻水を垂らしながら「ねぎだ」って喜んだと思う。
プルーンだの梅干しだの言うけれど、案外こういう「 おまじない」的なものは、家庭それぞれ( 特におばあちゃんの知恵の中) に存在することなんだなぁと思ったのである。このおまじないは、ごく普通の考え方なのだな、と。彼のおばあちゃんだけが魔女ではないのではない。きっと全国のおばあちゃんそれぞれおまじないを使っているもんなんだな、と納得した。
その確信が持てた後、友達に「そういやわたしはネギ巻かれたわ」と、おばあちゃんにネギマフラーのおまじないをかけられたことを打ち明けた。そうすると友達は、 この世に存在しないものを見るような顔で私のことを見て、「ないわ」と呟いたこと を覚えている。お前もや!梅干しこめかみに貼ってたくせに!
ふと、頭の中によぎる、この歌
ばあちゃんの口癖♪
うがい、手洗い、にんにく卵黄♪
うがい、手洗い、にんにく卵黄♪♪
あぁ、ばあちゃんの言う通り、
あぁ、ばあちゃんにはかなわない♬
株式会社健康家族は、きっとご家庭あるあるを歌にしたのだ。おばあちゃんにはかなわない♪そうだそうだ
やっぱり「卵かけご飯エピソード」で大爆笑し、彼をサイボーグからごく一般人に変換した意識は間違っていなかった気がする。おまじないはよくあることなんだよ。おばあちゃんのこと苦手とか言わないで!ネギマフラーのエピソード聞いてそんな驚かないで!
魔女のおまじないは、各家庭にある優しさと奇妙さが混在した最強の治療法なのかもしれない。医学的根拠だけが、人を健康にするわけではない気がした。